ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ

本文

移住者の声

印刷用ページを表示する 更新日:2020年1月27日更新
<外部リンク>

<移住者の声 第3回 中野 純さん>

「移住者の声」第3回目は、陶芸家として活躍されている中野純さんから、お話を頂くことができました。

●長柄町へ移住してきたきっかけを教えてください。
​それまでは東京で生活していましたが、陶芸の仕事をするうえで自然に囲まれた静かな環境で打ち込みたいという思いがずっとありました。それで千葉県内や奥多摩、秩父、伊豆、那須など関東近郊でほうぼうを探している中で出会ったのが長柄町です。

今工房が立っているこの場所は、もともとなにもない里山でした。初めてここに来た時、木が生い茂る中を尾根伝いに上がっていった先に小高くなったところがあって、そこに立って周りを見回した時に「ああ、ここいい場所だな・・・」と。とても自然に心が決まりました。それが2003年のことです。実際に工房ができて移ってきたのは2007年からで、今年で14年目になります。

自宅空撮

●数ある里山の中から、ここを選んだ決め手があれば教えてください。
​何もないのがよかったです。とにかく静かで制作に集中できる環境を探していたので、もってこいの場所でした。それでいて長柄町は東京へも日帰りできる距離で、いろいろな美術館や展覧会をさっと見てくることもできる。反対に情報を遮断して制作に集中することもできる。自分にとって理想的な環境でした。

制作風景

●実際に長柄町に暮して、どのような印象をお持ちですか。
​制作するにはとても暮らしやすいです。週に一度食料買い出しに出かける以外はずっと工房にこもっています。たまに東京に出ても、いつも早く帰りたいと思いますし、帰ってきていつもの田んぼの風景が見えてくると、ああ、帰ってきたな・・・とホッとします。
ご近所さんもいい方ばかりで、自家製の野菜やお米を分けてもらったり、僕も地方の個展から戻った時にはお土産を持っていったり、仲よくさせていただいています。また裏の土手が崩れないような水道(みずみち)の掘り方や山の手入れのコツを教えてもらえる、田舎暮らしの師匠でもあります。

自宅郵便受け山ゆり

●中野さんは陶芸のお仕事をされておられますが、お仕事の上で、長柄町からのインスピレーションはありますか。
​自然に囲まれた中で暮らしていると、自然を相手にした春、夏、秋、冬の仕事があります。春先から夏場にかけては草刈りで忙しいですし、先日のような台風や大雨があるとその対応にも追われます。木が葉を落として虫も出ない冬は山のメンテナンスの季節です。イノシシはもちろん、キジや蛇、ウサギ、リス、フクロウ、イタチ、タヌキ、アライグマにも出会います。そういった経験のひとつひとつが制作のヒントを与えてくれます。

雉
  
家の軒下にスズメバチの巣ができかけたことがあって、大きくなる前に対処しましたがその六角形の造形があまりに見事で、六角形の皿や花器を作ったこともありました。
六角形の皿はその形を生かして40枚を図案的に並べ、ひとつのインスタレーションとしての展示をしたこともあります。

インスタレーション
  
また、5年ほど前にはガリガリに痩せた栄養失調の子猫が迷い込んできて、これも縁かと思って面倒みることにしました。今ではすっかり元気になって、自由にのびのび暮しています。陶板の図案のモデルにもなってくれています(笑)

コハル中野さんとコハルコハル陶板

それから、釉薬の材料に使う藁灰の藁は、近くに住む仲良しの農家の方に田んぼの藁を分けてもらって、それを焼いて藁灰作りをしています。
このあたりは米の収穫が早く8月下旬には刈り取りが終わるので、その時に田んぼに残しておいてもらった藁を雨に当たらないうちに田んぼの中を何十往復もして手作業で運び出します。それを天日で干してから焼いて灰をとるのですが、なにしろ残暑厳しい炎天下なので全身汗だくのしんどい作業でした。でも苦労の甲斐あって、藁灰釉はふわっとしたとても品のいい白色に上がります。


藁灰1藁灰2
マグカップ

倒木があればそれを片付けついでに薪割りしてストーブの燃料にして、できた雑木の灰も釉薬の材料になります。自分の仕事も自然と人間の循環の一部なんだなあ、と。長柄で暮らすようになって、一層そう感じるようになりました。
  
薪ストーブ猫と薪 

●今後の目標を教えてください。
​今の自分にとって、一番大切なのは制作に集中できる環境であり、打ち込める時間です。自分の中で納得できるものづくりをして、それを発表して、皆さんに感想をいただいて、その中から新しいヒントをもらってまた制作して・・・それを繰り返していけることでしょうか。

あちこちに個展で出かけられるのも、制作のベースとなる今の工房があればこそだと思っています。

制作1制作2
制作3

中野さん、ありがとうございました。今後のご活躍を祈念しています。
中野さんのホームページは下記のとおりです。
​http://www.junnakano.com/<外部リンク>


このページのトップへ